飲食店の衛生管理は、食品工場の衛生管理とは異なります。
食品工場の衛生管理は、「数値・理論・安全>味」の3つの項目で構成されています。
食品工場では、毎日のように数値で安全度を把握するために菌検査を行い、また髪の毛や手指からの汚染を防ぐために、一見、大げさに見える白衣を着て調理します。
そして、調理された商品は、消費期限がつけられますので、当然、味より安全が優先されます。
調理する施設や設備もデザインより衛生第一に作られており、メンテナンスや掃除も毎日欠かしません。
このように、同じ食品業界と言っても、飲食店の衛生管理とは、まったく違うアプローチですので、食品工場の衛生管理の手法は飲食店に取り入れることはできません。
それでも飲食店の経営において、衛生管理が必要なことはみなさん理解されていると思います。
では、「飲食店の衛生管理って何でしょうか?」と質問すると、ある方は、「掃除をすることです」と言い、また、別の方は、「食中毒をださないこと」と言い、また、経営者の方に聞くと「何よりも従業員教育が大切だ」と」言います。
一般的に、飲食店においてこれまで「衛生管理」と思ってやってきた業務は、ほぼ「衛生作業」と言えます。衛生作業の中で一番イメージしやすいのが「掃除」ではないでしょうか?
しかし、掃除を行うこと自体は衛生管理ではなく衛生作業です。
図 お店でこれまでやってきたことは、「衛生作業」で「衛生管理」ではない
衛生管理のステップ
飲食店の衛生管理のステップは、3つの段階があります。
第一の段階は、日常の整理整頓を中心とした「基礎衛生管理」が挙げられます。次に基礎衛生管理を土台として一般衛生管理(10項目)があり、その上にHACCPなどの目指すべき衛生規格の取得の段階があります。
このステップを段階的に登っていく訳ですが、一足飛びにHACCPなどの衛生規格を取得しようとしても、無理が生じてしまい、毎日の書類管理がおろそかになり、現場の理解が得られず、逆に店の営業に支障がでかねない状況になります。
今すぐHACCPを取得できるレベルに登る必要はありません。当社では、多少時間がかかっても、段階を追って、基礎衛生管理→一般衛生管理→衛生規格の取得のステップを確実に登っていくことをお勧めしています。
図)衛生管理のステップ
お店が活性化する衛生管理とは?
飲食店において衛生管理の位置づけは、どこまでいっても間接経費の範囲からでることはなく、売上げに直接貢献することはありません。
ただし、一つだけお店に貢献できることは、従業員やアルバイトの管理ツールとして活用できれば、組織作りに役立つという見えない効果が期待できます。
では、お店が活性化する衛生管理とは?具体的にいったい何をすればいいのでしょうか?
飲食店の衛生管理は、食品工場のシステムで管理する方法とは異なり、従業員やアルバイトの個人の意識によって成り立っています。
お店としては、いかに従業員やアルバイトの意識を高めることができるか?が衛生管理の成功に関わってきます。
もちろん、味やコスト、接客がおろそかになっては絶対にいけません。一般的に「衛生管理」と言われている内容は、清掃や消毒、害虫駆除、細かく言えば、調理前やトイレ後の手洗いを徹底し、爪を短く切ったり、制服を清潔に洗濯し、帽子やネットを着用する作業です。
細かい部分にも目を配らなければいけませんが、なかなか習慣づけることは大変です。
また、体調が悪いときに作業させない、手指に傷があるときは手袋を着用してなるべく食材に触らない作業を担当させるなど、従業員一人ひとりの健康状況を把握した上で作業に従事させる必要があります。
ひとつひとつの衛生の作業は、すぐに実践できるものばかりで、すでに対策しているお店も多いでしょう。しかし、完璧に行うには多大なコストと労力がかかり現実的ではありません。
そして経営者は、衛生にかかわる業務ができているかどうかの基準として、文書で保存する必要があります。そして定期的に衛生基準を満たしているかどうかをチェックし、必要であれば改善の指示を出すことまでが、飲食店に求められる衛生管理なのです。
文書にすると、難しそうですが、ひとつひとつは単純な業務です。それよりも気を付けなければいけないことは、先ほど述べたように、衛生作業を行っているからといって、衛生管理ができていると勘違いを起こしてしまうことなのです。
まずは、毎日の衛生作業を行い、記録をつけましょう。
そのやりとりを毎日続けるうちに、飲食店に必要な衛生管理のやり方を、お店の一人一人が理解できるようになります。
当社が業務として行っている「毎日の衛生管理サポート」と「万が一の事故対応」で経営者の皆さまが安心して本業に専念できる体制をお手伝いします。
図:飲食店の衛生管理